<後期にやったこと>

国際文化学科 4年 屋比久美樹

 

「日本の難民認定制度を考える―難民申請者の抱える問題と支援活動から見える課題―

 

 私自身の難民問題に対するもともとの知識が乏しかったことから、前期はインターネットや文献を読み調べ、難民問題に関する知識をつけることに重点を置いて、このテーマに取り組んできた。しかし、現在の日本の難民認定制度はあまりにも多くの問題が複雑に絡み合っており、また、日々変化していく難民を取り巻く環境の実態を探る上で、インターネットや文献に頼った調査には限界を感じ始めていた。

 そこで、多少遅すぎた感もあったが、現場の声を集める必要性を感じ、125日の世界人権デーパレードへの参加を決めた。そこで、以前メールにて質問をさせていただいたアムネスティ・インターナショナル日本の柳下氏にお会いし、パレードに参加している難民申請者へのインタビューも実現した。これは私にとって非常に大きな収穫となった。何か一つの問題について考察する場合、その問題に関する知識を身につけることは最低限必要なことではあるが、さらに掘り下げて考察を深めていく上で、その問題の渦中にいる人々への直接のアプローチが不可欠であると感じた。

 実際、第一線で闘っている難民申請者や難民問題に取り組む支援者の方々から得られた声は、この問題が「生きている」ことを私に実感させた。インターネットや文献からは見えてこなかった難民申請者一人一人の抱える苦悩、困難、不安、孤独といったものがひしひしと伝わってきた。

 その後、これまでに関わってきた人々から次々に新たに関係者を紹介していただき、「アリ・ジャンを支える会」代表の若松氏、国連難民高等弁務官事務所駐日地域事務所の金児氏、「牛久収容所問題を考える会」の田中氏や牛久収容所の被収容者と、様々な角度からこの問題に取り組んでいる人々の声を集めることができた。難民問題に関してはまだまだ勉強不足で至らない点も多かった私の質問にも一つ一つ丁寧に答えて下さり、私個人では入手できないような資料を提供していただくなど、本当にたくさんの協力を得ることができた。

 ただ、課題としてテーマ設定の絞込みが甘かったことが挙げられる。日本のことに限定して取り組んだとはいえ、「難民認定制度」というものを総合的に扱うには、一学生の卒業論文として取り上げるにはあまりにも大きすぎるテーマだったと後になって反省した。もう少し早い段階からこの問題に関する文献や資料を集め、具体的に難民認定制度の中でもどの問題に焦点を絞って調査を進めるか、考えるべきだったと思う。

 しかし、多くの反省点も残るが、それでも後期に行なったインタビューや現地調査からいろいろなことを感じ取れたことは、非常に意味のあるものであった。インターネットや文献による調査や考察が意味の無いものとは思わない。そういったものを深く熟考することもまた必要なプロセスなのかもしれない。ただ、私の場合は現場に足を運び、自分の目で見て、自分の耳で聞いて、全身で感じ取ったことが、この問題をよりリアルなものとして捉えることができるきっかけとなった。そして、活字からは見えなかった一人一人が抱える痛みや苦しみ、ときには喜びに触れることができたことが、何よりも貴重な収穫であった。

 論文としてはまだまだ至らない点も多く残るが、調査・執筆をしていく過程は、私自身の世界を広げ、結果としてさらに問題意識を高める良い機会となった。大学生活4年間の集大成として、一つの論文を書き上げた充実感と、この卒論を書く過程において得られた様々な貴重な経験が、今後の私にとって大きな糧になったことは確かである。

 

 

○後期に行なったインタビュー・調査

     世界人権デーパレード2004

(クルド人、ビルマ人、フィリピン人等難民申請者十数名、支援者数名への聞き取り)

     アムネスティ・インターナショナル日本の柳下氏(メールにて)

     法務省入国管理局職員(メールにて)

     難民問題を特集したドキュメンタリー番組

     「アリ・ジャン氏を支える会」代表の若松氏

     国連難民高等弁務官事務所 駐日地域事務所の金児氏

     「牛久収容所問題を考える会」代表の田中氏

     牛久収容所の被収容者との面会

     フリージャーナリスト(難民問題を扱っている)の西中氏

     学生活動を行なっている大学生